転売ヤーの何が悪い?なぜ転売はなくならないのか?私たちにできる対策は?

人気ゲーム機の後継機Nintendo Switch2が発売され、転売問題が話題になっています。

抽選に外れて手に入らなかった人たちの、高額で転売する転売ヤーたちへの怒りの声があがっており、フリマサイトでのSwitch2出品ページのコメント欄も荒れています。

任天堂の販売方法には称賛の声がありましたが、それでも蓋を開けてみると大量の高額転売が行われ、メルカリなどのフリマアプリに対する批判も目立ちます。

 

【スポンサーリンク】

 

なぜ転売ヤーは悪なのか

現状、コンサートやスポーツ観戦などのチケット以外の転売は法律で規制されていません。

転売自体は、安く買って高く売るという商売の基本であり、卸売りも小売りも基本は転売と変わりません。

では、なぜ転売ヤーは悪として叩かれるのか。

まずは転売ヤーの問題点を整理しておきたいと思います。

 

1. 本当に欲しい人が買えなくなるから

数に限りのある商品を転売ヤーが大量に買い占めてしまうことで、純粋に欲しいと思っていた人が手に入れられなくなります。

また転売ヤーは利益のためだけに購入しており、ゲームが大好きで発売日を楽しみにしていたファンや子供に買ってあげたかった親など、純粋な気持ちが踏みにじられているため、怒りが湧きます。

新型ゲーム機を発売日に手に入れたいというファンにとって、「発売当日に手に入らない、なのにフリマアプリには数倍の価格で何台も出回っている」という状況は、ファンの熱意や期待を冷まします

なかなか手に入らないとなると「もういいや」となる人もいるでしょう。

定価以上の高額で販売することで、市場の健全性も壊れていきますし、企業にとっても正確な販売データを得られず今後の生産数にも影響があります。

本体は売れたのにソフトが売れていないということにもなるでしょう。

 

2. 不公平であると感じるから

プロの転売ヤー集団による人海戦術や自動購入ツール(ボット)を利用するなど、一般の購入者には対抗できない不公平な手法を使っているため、不公平感があります。

誰でも平等に手に入れられるはずのものが、転売ヤーによって平等でなくなっているということが許せません。

 

3. 不当な利益を得ているから

定価で買って、すぐに数倍の価格で売るという行為は、何の価値を生んでいないのに儲けていると見られます。

卸売りや小売りは、製造者だけではできない、消費者に商品を届けるという価値を生んでいるため、転売ヤーとは異なります。

 

つまり、転売ヤーが叩かれるのは、

  • 購入機会の奪取
  • 市場や体験の破壊
  • 公平性の欠如
  • 利益構造の不透明さ

といった、倫理的・経済的・感情的な問題が重なっているためです。

 

なぜ転売はなくならないのか──買う人がいる限り転売はなくならない

本当に欲しかった人が手に入れられないのは理不尽であり、「転売ヤーなんていなくなればいい」と思う人は多いでしょう。

しかし、高額でも買ってしまう人がいる限り、需要はなくなりません。

 

本当に転売をなくしたいなら、誰も買わないということが、何よりの対策になります。

 

ではなぜ誰も買わないという選択ができないのでしょうか。

 

1. 理性では抑えられない欲求

Switch2がどうしても欲しくてたまらない、誰よりも早く一番にプレイしたいという人にとっては、「転売ヤーから買わない」という倫理よりも「いくらであろうと今すぐ手に入れたい」という欲求が勝ってしまいます。

子供が欲しがっている親の場合、「買ってあげたい」と思う気持ちが、倫理的判断を超えてしまうこともあるかもしれません。

 

2. 今買わないと損をするという希少性

人間は手に入りにくいものに対して、より強い価値を感じる傾向があります。

発売したばかりで話題の今持っていることに価値があると感じて欲しくなってしまいます。

今買わなければいつ手に入るか分からないという状況であれば、定価以上であっても買ってしまいます。

今という時間や体験、待つ時間をお金で買っていると考えられます。

 

3. 捨てるほどお金を持っている人がいる

世の中には「お金なんて捨てるほどある人」が一定数います。

彼らにとっては、数万円の上乗せは手数料程度の感覚です。

転売ヤーは主に、そういった多少のプレミアは気にしないお金持ち層をターゲットにしていると考えられます。

 

4. みんながやっているという同調圧力

フリマサイトで売れているのを見ると、転売ヤー買うのが普通という空気ができてしまい、それがさらに転売市場を支えることになります。

 

なぜ転売はなくならないのか──企業の対応には限界がある

任天堂の転売対策はこれまで以上に厳しいものでしたが、それでも転売を防ぐことはできませんでした。

またフリマアプリと連携して転売対策をしているようですが、出品禁止にしているところと注意喚起で終わっているところと対応が分かれています。

「企業がもっとしっかり対策してくれれば」と思う方もいるでしょう。

しかし、企業やプラットフォーマーの対応には限界があります。

 

フリマアプリが一時的な出品禁止をしない理由

1. 法律違反ではないため

転売そのものは原則として違法ではなく(ただし、チケット転売など一部は法律で規制されている)、法的に黒、グレーでない限り、「自由な売買の場」としての中立性を重視する傾向があります。

 

2. 利益が最優先であるため

企業は利益をあげることが最優先の目的です。

利益がなければ従業員の給料も払えません。

高額商品の転売は、手数料も高くなるため、短期的には大きな収益源であり、禁止するとその利益を逃すことになります。

Switch2が65,000円で売れれば、メルカリは手数料の10%である6500円の収入になり、転売ヤーよりも高い収入になります。

このことからフリマアプリは転売ヤーを放置していると批判されやすいです。

 

3. 独自ルートを持つ転売ヤーが一人勝ちする

出品を禁止すると、知人ネットワーク、掲示板、違法取引など、プラットフォーム外での転売が増える可能性があります。

「完全に締め出すと、逆に地下での高額取引や転売ヤーの独占が進むのでは?」という実利的な懸念があります

それならば「誰でも売れる・誰でも買える」オープンな場で動きを可視化しようとなるわけです。

 

4.対策コストが高く、ユーザー離れにつながるリスクがある

転売ヤーを取り締まるには手間も人件費もかかってしまいますし、正規に商品を買ったけど事情があって売りたいだけの一般人との見分けが難しいです。

一律禁止にすると、正当な利用者の機会まで奪ってしまい、ユーザー離れにつながるリスクもあります。

 

一時的に出品を禁止していないフリマアプリのスタンスは、「法律違反ではないし、利益にもなるし、規制はバランスが難しい」という現実主義的な立場であると思います。

「禁止して失う利益」と「社会的な批判」を天秤にかけて判断している思われます。

個人的には出品禁止でははく、定価以上で出品できないようにするのはどうかと考えましたが、「価格は出品者と落札者が自由に決める」という自由市場の原則に反しますし、商品を完全に選別することが難しいため、抜け道が登場する可能性が高いと思います。

 

販売企業の転売対策の限界

任天堂はハードルの高い抽選販売方法や、日本語版と多言語対応版とで価格を変えるなど、これまでにない転売対策で称賛されました。

しかし、転売を完全に防ぐことはできませんでした。

 

もっと十分に在庫を確保してから発売したらいいのではと思いますが、「発売初日に行列、完売」という状況を意図的に作り出し、発売時の話題性や注目度を上げることで、購買意欲を高めたり、ブランド価値を高めるといったマーケティング戦略があったり、在庫を抱えるリスクも大きいため、市場の反応を見る前は在庫を少な目にしていると考えられます。

せめて、次回の入荷時期を発表してくれたら、それまで待とうという人も現れて、少しでも転売対策になると思うのですが。

 

大企業ほど倫理や社会的責任を意識しているとは思いますが、当然ながらそれはあくまでも「利益と矛盾しない範囲」という条件付きであることがほとんどです。

 

なぜ転売するのか

では、なぜ転売ヤーが生まれるのでしょうか。

それは参入障壁が低く、比較的楽に稼ぐことができるからだと思います。

フリマアプリの登場により、より手軽なものになりました。

 

転売ではなく、卸売り業者や小売り業者のように販売元から直接的に仕入れることができれば転売などしなくても稼ぐことができますが、販売元、卸売り、小売りのどの企業も大手ばかりで参入の余地はありません。

安定した物流網(倉庫、配送手段)、顧客対応やサポート体制、信用・財務状況、長期的な取引実績などの条件をクリアしなければSwitch2のような商品を扱うことはできません。

フリーザみたいな戦闘力53万の相手に、戦闘力5の普通の人間は正攻法では太刀打ちできません。

 

また、仕事が見つからない、生活費を稼ぐための手段が他にない、子供を食べさせるためになんとかしないといけなかった、借金があり追い詰められていたなど、事情があり、生きるために仕方なく転売することを選んでいる人もいるだろうと思います。

転売を正当化、容認するわけではありませんが、一部にやらざるを得なかった人がいることは否定できません。

そういう人もいるかもしれないと想像するだけで、違う角度から世界を見ることができる気がします。

 

このような個人ではどうしようもない無力感が根底にあるのではと考えています。

他に良い仕事があればわざわざ転売をしようとは思わないのではないでしょうか。

 

まとめ:どうすれば転売がなくなるのか

理屈では、誰も買わなければ転売はなくなります。

しかし、人間の欲求・恐れ・同調・格差といった心理的・社会的な力が、理屈を超えて動いているのです。

残念ながら、自分さえよければいいという人も存在します。

そして、企業は利益が最優先事項のため、対策の面でも限界があります。

必要なのは、企業の技術的・制度的な対策に加えて、消費者が「転売ヤーから買わない」選択が正しいという文化を育てること、そして、転売ヤーが生まれないような社会にしていくことだと思います。

 

「この世は、国や大企業などの大きなものではなく、ひとりひとりの日々の行動、誠実さや正しさなどの小さなもので支えられている」という哲学の言葉があります。

 

誰にでもできることは「自分は転売からは買わない」という姿勢を持つことです。

こうした「ささやかな意識の変化」こそが、少しずつでも社会を良くするのだと信じています。

 

【スポンサーリンク】

ピックアップ関連コンテンツ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です